御燈祭(おとうまつり)は、和歌山県新宮市の神倉神社で毎年2月6日に斎行される勇壮な火祭りである。世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」を構成する熊野速玉大社の摂社・神倉神社を舞台とし、急峻な石段で知られるご神体「ゴトビキ岩」のもとに、白装束に荒縄を腰に巻いた「上り子(のぼりこ)」と呼ばれる男たちが集う。

祭りの起源は古く、熊野信仰の歴史とともに千年以上にわたって受け継がれてきたと伝えられる。上り子は数日前から精進潔斎し、当日は松明を手にして神倉神社の社殿前に集結する。神火が松明に移されると、約500段に及ぶ急な石段を、無数の炎が滝のように流れ下る。その光景は「下り龍」とも呼ばれ、闇夜に火の帯が連なる様は圧巻である。

御燈祭は、原則として男性のみが参加する祭りとして知られ、地域の成人儀礼的な性格も併せ持つ。新宮節にも「御燈祭は男の祭り」と歌われるほど、地元の人々にとって特別な意味を持つ年中行事である。2016年には国の重要無形民俗文化財に指定された。寒さの厳しい初春の夜に燃え上がる炎は、新年の無病息災と豊穣を祈る祈りの象徴であり、熊野の聖地に伝わる火と信仰の文化を今に伝えている。


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