概要
七尾祇園祭(ななおぎおんまつり)は、石川県七尾市の中心部にある大地主(おおとこぬし)神社(山王神社)の夏の例祭で、毎年7月第2土曜日に行われます。能登半島一帯に二百以上伝わる「キリコ祭り」のひとつで、市街地の氏子町から大小11基の奉燈(ほうとう=キリコ)が担ぎ出され、夜のかがり火を囲んで勇壮に乱舞する様子から「東のおすずみ」とも呼ばれます。同じ大地主神社の春の例祭である青柏祭(せいはくさい)、夏の石崎奉燈祭、七尾港まつりとともに七尾を代表する大祭に数えられ、笛・鉦・太鼓の囃子と若衆の威勢のよい掛け声が、能登の短い夏の夜を熱く彩ります。
歴史・由来
七尾祇園祭の起源は古く、疫病除け・防疫の神として全国に祇園信仰が広まった平安時代に、京都の祇園社(牛頭天王を祀る社)の祭神をこの地に勧請し、旧暦6月14日に七尾祇園會(ぎおんえ)を執り行ったことに始まると伝えられています。祭神である牛頭天王が暑い盛りに涼を求めて浜辺の仮宮へ遷座することから、この祭りは「お涼み祭り(おすずみ祭)」とも呼ばれてきました。祭礼にはキュウリを捧げる習わしがあり、江戸時代に入って燈籠を献じるようになったことが、現在の奉燈行事の始まりとされています。
もとの祇園牛頭天王社は現在の鍛冶町・安楽寺の地にありましたが、1635年に山王森(現在の山王町)へ移され、1882年(明治15年)には既存の山王社と天王社の両社を合祀して大地主神社と改められました。以降、祇園祭はこの大地主神社の例祭として受け継がれています。明治43年には七尾の市街地に電線が張り巡らされ、それまでの大型の奉燈が出せなくなったため、各町は独自の小型の俄(にわか)燈籠を担ぐようになりましたが、昭和36年に大型奉燈が復活し、太鼓・鉦・笛による奉燈囃子も習い覚えて現在の姿へと受け継がれてきました。1997年(平成9年)には能登一円のキリコ祭りが国の「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」に選択され、2015年(平成27年)には「灯り舞う半島 能登〜熱狂のキリコ祭り〜」として石川県・能登の6市町とともに日本遺産に認定されています。
見どころ
最大の見どころは、夜のかがり火を囲んで奉燈が競い合うように疾走し乱舞する場面です。11基の奉燈のうち、郡町西部の大奉燈は高さ約12〜13メートル・重さ約1〜2トンにおよぶ巨大なもので、約100人の若衆の手で担ぎ上げられます。残る10基は高さ5〜10メートルほどで、奉燈の正面には「破天荒」「歓無極」「牛頭天王」といった勇ましい漢字三〜四文字が縦に墨書され、裏面には武者絵が描かれ、夜になるとこれらに灯がともって闇夜に浮かび上がります。町ごとにチームカラーが定められているのも特徴で、担ぎ手の装束の色で、どの町の奉燈かを見分けることができます。
奉燈の運行は太鼓・笛・鉦の囃子によって統率され、太鼓が打たれると「サー、イヤサカサ」の掛け声とともに担ぎ上げられ、「サッカサイ、サカサッサイ、イヤサカサー」という威勢のよい掛け声をあげながら進みます。赤襷(あかだすき)の指導者が太鼓に合わせて疾走・徐行・停止の合図を出し、巨大な奉燈を見事に統率していく様も大きな見どころです。初子の誕生や家屋の新築など祝いごとのあった家が町内の奉燈に祝酒を出し、若衆が「祝賀加賀長久弥栄(シューガ・カーガ・チョウチン・ヤットコセー)」と祝唄を返す古い習わしも今に残ります。
開催情報・アクセス
七尾祇園祭は毎年7月第2土曜日に、七尾市山王町の大地主神社および市街地東部を舞台に行われます。午後3時頃に大地主神社で神事が営まれて御祭神が神輿に遷され、子供たちの奉燈音頭に先導されて湊町の仮宮へと向かいます。夕刻から各町の奉燈が担ぎ出されて町内を巡行し、午後8時頃には湊町の仮宮前の広場に集結してお祓いを受け、御幣を拝受。午後9時半頃に一撃花火を合図にくじで決まった順番で仮宮を出発し、神輿を先導しながら大地主神社へ向かいます。狭い路地を家の軒すれすれに担ぎ回し、境内のかがり火の周りで再び乱舞したのち、最後に古くから七尾に伝わる祝儀唄「七尾まだら」を皆で合唱して祭りを締めくくります。会場へはJR七尾駅から徒歩圏内で、能登里山海道や能越自動車道を利用して車でアクセスすることもできます。
周辺の見どころ
七尾は能登半島の玄関口として観光資源に恵まれた町です。市内には能登の海の幸や特産品が集まる道の駅「能登食祭市場(七尾フィッシャーマンズ・ワーフ)」があり、新鮮な魚介や食事を楽しめます。少し足を延ばせば、開湯1200年を誇る名湯・和倉温泉があり、夏には和倉温泉の花火も催されます。和倉から能登島大橋を渡れば、イルカやジンベエザメで知られる「のとじま水族館」やマリンスポーツが楽しめる能登島へ。長谷川等伯ゆかりの七尾美術館も見ごたえがあり、祭りの前後に能登の自然・歴史・食を組み合わせて巡ることができます。
関連情報
七尾祇園祭が属する能登のキリコ祭りは、2015年に日本遺産「灯り舞う半島 能登〜熱狂のキリコ祭り〜」の構成文化財に認定されており、地域の信仰と熱狂を今に伝えています。同じ大地主神社の春の例祭である青柏祭では、高さ約12メートル・重さ約20トンという日本最大級の曳山「でか山」3基が市街地を巡行し、その方向転換「辻廻し」の妙技が知られています。また、近隣の石崎町で8月初旬に行われる石崎奉燈祭は、担ぐ奉燈としては能登一の大きさを誇る「男祭り」として名高く、七尾祇園祭とは担ぎ手を相互に貸し借りする協力関係にあります。夏の能登を訪れるなら、これらのキリコ祭りを合わせて楽しむのがおすすめです。
出典・関連リンク
- 📚 出典: Wikipedia, Wikidata (CC BY-SA 4.0)
- 🇯🇵 Wikipedia (日本語)
- 🔁 English version: Nanao Gion Matsuri