おわら風の盆(おわらかぜのぼん)は、富山県富山市八尾(やつお)地区で、毎年9月1日から3日にかけて行われる盆踊りである。哀切な胡弓(こきゅう)の音色と、編笠を目深にかぶった踊り手たちの優雅で幻想的な舞で知られ、越中富山の秋の訪れを告げる風物詩として全国的に高い人気を誇る。

「風の盆」の名は、台風が来襲する二百十日(にひゃくとおか)の頃に、風を鎮め豊作を祈願したことに由来するとされる。約300年の歴史を持つこの行事は、一般的な盆踊りの賑やかさとは一線を画し、しっとりとした情緒と気品にあふれている。三味線・太鼓に加え、おわら独特の胡弓が奏でる物悲しくも美しい旋律「越中おわら節」が、踊りの世界を一層深いものにしている。

最大の魅力は、坂の町・八尾の風情ある町並みを舞台に繰り広げられる踊りである。夜になると、家々の軒先にぼんぼりの灯りがともり、編笠で顔を隠した男女が、無言のまま洗練された所作で優雅に舞い流す。男踊りは勇壮に、女踊りはしなやかに、それぞれの美しさを競う。胡弓の音色と踊り手のシルエットが闇に浮かぶ幻想的な光景は、訪れる人々の心を強く捉える。越中八尾に受け継がれてきたおわら風の盆は、日本の盆踊りのなかでも特別な美しさを湛えた、秋の夜の芸術である。


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