概要

安倍川花火大会は、静岡県静岡市葵区の安倍川河川敷で開催される花火大会である。毎年7月の最終土曜日に行われ、尺玉やスターマインなど大迫力の花火が約15,000発打ち上げられる。東海地方でも有数の花火大会として知られ、例年35万人以上の観客が訪れる。

この花火大会の最大の特徴は、市内の5つの学区(駒形・新通・田町・長田北・長田東)が企画・運営を担う民間主導の大会である点だ。全国的にも珍しい組織形態で、地域住民が主体となって半世紀以上にわたり継続されてきた。行政主導の花火大会が多い中で、地元の結束力を示す存在として評価されている。

歴史・由来

安倍川花火大会の起源は1953年(昭和28年)8月に遡る。静岡西部発展会が企画した「東海道花火大会」として、安倍川橋と東海道線鉄橋の間の安倍川川原で第1回が開催された。戦後間もない時期であり、戦没者の慰霊と鎮魂、そして復興への祈りを込めて始まったことが、大会の根底にある精神である。

第2回と第3回は地元の木工業界との協力により「木工祭花火大会」と名称を変え、会場も行政中心の城内の堀に移して行われた。しかし第4回から現在の「安倍川花火大会」の名称となり、再び安倍川の河原で開催されるようになった。第4回大会は実施中に未曾有の大落雷に見舞われ中止となり、翌年の第5回は休止となったが、地元住民や県内外からの復活熱望を受け、1958年(昭和33年)7月20日に第5回大会が再開された。

その後、田町学区、長田北学区、長田東学区が加わり、駒形・新通と合わせた5学区の協力体制が確立された。初代会長の蒔田忠兵氏、2代目の大渡紋弥氏、そして第6回(1959年)から35回大会の準備半ばに他界するまで活躍した3代目会長の酒井源太郎氏が大会の基盤を築いた。

2005年(平成17年)の第52回大会は、静岡市が政令指定都市となったことを記念する大会として開催され、観客数50万人を記録した。一方で、2018年と2019年は台風の影響で中止、2020年と2021年は新型コロナウイルス感染防止対策により中止され、5年ぶりの開催となった2022年の第69回大会では時間短縮や打ち上げ場所の増加などの対策が取られた。

見どころ

尺玉の連続打ち上げ 安倍川花火大会の最大の見せ場は、尺玉が連続して打ち上げられるプログラムである。尺玉は直径約30センチメートルの大型玉で、上空で直径約300メートルにも及ぶ大輪の花を咲かせる。夜空一杯に広がる尺玉の連発は、観客から大きな歓声と拍手を誘う。

スターマインの競演 複数の打ち上げ筒から次々と花火が打ち上げられるスターマインが、連続して提供される。スターマインは色とりどりの花火が重なり合い、夜空をキャンバスに見立てた芸術作品のような演出を見せる。打ち上げのリズムや色の組み合わせは、その年のテーマに合わせて設計される。

大仕掛け花火「安倍川の瀑布」 安倍川の河原を活かした大仕掛け花火は、川面に映る花火と相まって幻想的な景観を創り出す。特に「安倍川の瀑布」と名付けられた仕掛け花火は、水流を模した光のカーテンが川岸に広がる。この演出は、安倍川の自然環境と花火の融合を体現している。

戦没者慰霊の花火 大会の開催前には、戦没者慰霊法要が行われる。この法要は、花火大会が戦没者の慰霊と鎮魂を目的に始まった歴史を今に伝える重要な儀式である。慰霊の花火として打ち上げられる一発一発に、平和への願いが込められている。

地域住民による運営の温かみ 5学区の住民が当日の警備や案内、清掃などを分担して運営する。花火大会の翌朝には市清掃課が協力して会場を清掃するなど、地域全体で支える体制が整っている。この温かみのある運営が、リピーターを生む要因の一つとなっている。

打ち上げ場所の近さによる迫力 安倍川河川敷という限られた範囲に会場が設定されており、打ち上げ場所から観客席までの距離が比較的近い。そのため、花火の音や衝撃が体感できる迫力満点の観賞が可能である。大玉が頭上で炸裂する瞬間は、全身で花火を感じられる。

開催情報・アクセス

  • 開催時期:例年7月最終土曜日(荒天中止・延期なし)。最新の開催日程・実施可否は公式サイトで確認すること。
  • 開催場所:静岡県静岡市葵区田町七地先 安倍川河川敷(安倍川橋上流、安西橋下流左岸周辺)。打ち上げ場所は同河川敷の1箇所。
  • アクセス:公共交通機関が推奨される。JR静岡駅から徒歩約15分、または静鉄バス「安倍川橋」バス停下車徒歩約5分。当日は周辺道路で大規模な交通規制が実施されるため、自家用車での来場は困難である。
  • 料金:沿道での無料観覧が可能。有料観覧席(桟敷席など)が設置される年もあるが、料金は年により変動するため公式発表を参照すること。
  • 打ち上げ時間:午後7時30分から午後9時00分まで(年により変動あり)。打ち上げ開始時刻は日没後の暗さに合わせて調整される。
  • 駐車場:大会専用の駐車場は設けられていない。周辺の有料駐車場は混雑が予想されるため、公共交通機関の利用が強く推奨される。
  • 主催・問い合わせ:安倍川花火大会本部(静岡市葵区本通西町15、電話番号:054-221-7199)。問い合わせは電話でのみ受け付けている。

周辺情報

安倍川花火大会の会場周辺には、静岡市の中心部が広がっている。JR静岡駅から徒歩圏内であり、駅周辺には多数の飲食店や宿泊施設が集積している。花火大会の前後には、駅前の繁華街で地元の食材を使った料理を楽しむことができる。

安倍川の対岸には、徳願寺山がそびえる。この山は、かつて2尺玉が打ち上げられた場所として知られ、花火の歴史に深く関わる存在である。また、安倍川の河川敷は普段は市民の憩いの場として利用されており、花火大会の時期以外にも散策を楽しめる。

静岡市は「静岡茶」の産地としても有名であり、会場周辺の茶舗では新茶の販売が行われる。また、安倍川名物の「安倍川もち」は、きな粉とあんこで食べる和菓子で、花火大会の露店でも販売されることが多い。観光客は、花火観賞の前後にこれらの地元グルメを味わうことができる。

関連情報

  • 関連イベント:花火大会当日の午後には、会場周辺で戦没者慰霊法要が執り行われる。また、過去には「安倍川蓮台越競争」など、河原を活用した催しが行われたこともある。
  • 歴史的記録:初回開催は1953年(昭和28年)。第6回(1959年)からは「薄暮花火(けむり)」が始まり、2尺玉の打ち上げもこの年から実施された。
  • 打ち上げ花火の種類:尺玉(直径約30センチ)、スターマイン、仕掛け花火、2尺玉(直径約60センチ。年により打ち上げの有無が変わる)など。
  • 参加団体:駒形学区、新通学区、田町学区、長田北学区、長田東学区の5学区。これらの学区が協力して運営する民間主導の大会である。
  • 中止の歴史:台風や新型コロナウイルス感染拡大により、戦後何度か中止を経験している。過去の事例として、2018年(台風)、2019年(台風)、2020年・2021年(新型コロナウイルス)の中止がある。
  • 公式情報の確認先:最新の開催情報や交通規制図は、安倍川花火大会公式ウェブサイト(https://www.abekawa-hanabi.com/)で確認できる。また、静岡市公式ホームページでも情報が掲載される。

出典・関連リンク

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