概要

熱田まつり(あつたまつり)は、名古屋市熱田区の熱田神宮で毎年6月5日に行われる例祭で、「尚武祭(しょうぶさい)」とも呼ばれます。三種の神器の一つである草薙神剣(くさなぎのみつるぎ)を御神体として祀る熱田神宮にとって、一年で最も重要かつ荘厳な祭典であり、天皇陛下のおつかいである勅使が参向します。祭典後には献灯まきわらや花火をはじめとする数々の奉納行事が催され、名古屋に夏の訪れを告げる祭りとして市民に広く親しまれ、毎年およそ25万人もの参拝者でにぎわいます。地元では、この祭りの日から浴衣を着るならわしがあるといわれ、うちわを片手に露店をのぞき歩く、まことに季節感あふれる一日となります。勅使を迎える厳粛な神事と、市民が参加して心ゆくまで楽しむ祝祭とが分かちがたく一体となっている点こそが、この祭り最大の特色といえるでしょう。

歴史・由来

熱田神宮は、日本武尊(やまとたけるのみこと)ゆかりの草薙神剣を御神体として祀る、伊勢神宮に次ぐ格式を誇る古社です。草薙神剣は天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)とも呼ばれ、天皇家の「武」を象徴する神宝とされてきました。その御神体を奉斎する神宮の例祭である熱田まつりは、本宮・別宮をはじめ境内外あわせて43に及ぶ摂末社のすべてで斎行される神宮最大の大祭です。祭典では、まず宮司が祝詞を奏上し、続いて勅使による御幣物(ごへいもつ=神への供え物)の奉納と御祭文(ごさいもん)の奏上が行われ、皇室の弥栄と国家の平安が祈念されます。「尚武祭」という別名は、武を尊ぶという意に由来し、神剣を祀る熱田神宮の性格を色濃く映したものです。神剣を奉斎する神社であることから、古来より武道の奉納がこの祭りと深く結びついてきました。荘厳な勅使参向の神事という「静」の側面と、市民が参加して楽しむ華やかな奉納行事という「動」の側面とが、長い歳月を通じて一つの祭りとして溶け合い、今日まで大切に受け継がれてきたのです。

見どころ

熱田まつり最大の風物詩は、夕刻から各門に奉飾・点灯される「献灯まきわら」です。まきわらとは、おびただしい数の提灯を半球状の屋根のような形に吊り下げた神輿状の献灯で、境内の東・西・南の三つの門に計5基が掲げられます。提灯の数は、一年の日数と月数を合わせた377個(365日+12か月)にちなむといわれ、無病息災を祈る意味が込められています。闇のなかにぼうっと浮かび上がる無数の灯りが幻想的な雰囲気を醸し出し、そのまきわら越しに花火が打ち上がる光景は、この祭りを象徴する絶景として広く知られています。夜には隣接する神宮公園で花火大会が催され、名古屋の夏の到来を告げる大輪の花火が次々と夜空を彩ります。境内では尚武祭の名にふさわしく、弓道・柔道・剣道・相撲といった武道大会が次々と繰り広げられ、さらに演芸・俳句・献書・献茶・献花など多彩な奉納行事が一日を通して行われます。近郊の各町内からは子供獅子やまきわらみこしが奉納され、尾張新次郎太鼓の腹に響く力強い音色や、熱田神楽の厳かな奉納演奏が祭りを大いに盛り上げます。神事の厳粛さと市民の祝祭の華やぎとが境内のあちこちで同時に展開するさまこそが、この祭りの尽きせぬ魅力です。

開催情報・アクセス

熱田まつりは毎年6月5日に、熱田神宮(名古屋市熱田区神宮一丁目)を中心に行われます。午前10時から本宮で例祭が斎行され、午後には南新宮社祭などの神事が続き、夕刻から各門で献灯まきわらが点灯され、夜には神宮公園で花火が打ち上げられるという流れで、一日かけてさまざまな行事が展開します。アクセスは、名鉄名古屋本線「神宮前駅」から徒歩約3分と至便で、JR東海道本線「熱田駅」、名古屋市営地下鉄名城線「神宮西駅」「伝馬町駅」からも徒歩圏内と、公共交通機関で訪れやすいのも大きな特徴です。当日は多くの参拝者で大変にぎわい、周辺では交通規制も行われるため、できるだけ公共交通機関を利用するのがおすすめです。境内や参道には数多くの露店が立ち並び、浴衣姿でそぞろ歩きながら、初夏の夜祭りの風情を存分に味わうことができます。

周辺の見どころ

熱田神宮の広大な境内には見どころが多く、樹齢千年を超えるといわれる御神木の大楠や、織田信長が桶狭間の戦いの戦勝祈願のお礼に奉納したと伝わる「信長塀(のぶながべい)」などが点在し、深い杜のなかをゆっくりと散策できます。境内の宝物館や、刀剣専門の展示館「剣の宝庫 草薙館」では、草薙神剣を祀る神宮にふさわしく、450余口にのぼる刀剣をはじめとする数々の貴重な文化財を鑑賞できます。来国光の短刀など名刀の数々は、刀剣ファンならずとも見ごたえ十分です。門前町には、名古屋名物のひつまぶし発祥とされる老舗をはじめ、味噌カツやきしめんなど名古屋めしを味わえる店が集まり、参拝とあわせて食も楽しめます。熱田から名鉄や地下鉄で名古屋市の中心部へもほど近く、名古屋城や大須商店街、名古屋港エリアなどと組み合わせて巡るのにも便利です。

関連情報

熱田まつりは、熱田神宮が一年を通じて行う約60の恒例祭典・特殊神事のなかでも、最も重要な例祭にあたります。勅使が祭儀そのものを司る勅祭ではありませんが、勅使が参向し皇室との深い結びつきを示す、たいへん格式の高い祭典です。草薙神剣を御神体とする神宮の性格から武道が重んじられ、それが「尚武祭」の名にも表れています。一方で、献灯まきわらや花火、各町内からの子供獅子やまきわらみこしといった市民参加の奉納行事と一体となることで、神聖さと親しみやすさを兼ね備えた祭りとして発展してきました。名古屋の人々にとっては「この祭りから夏が始まる」と感じる季節の大きな節目であり、東海地方を代表する初夏の風物詩として、世代を超えて深く根づいています。


出典・関連リンク

  • 📚 出典: Wikipedia, Wikidata (CC BY-SA 4.0)
  • 🔁 English version: Atsuta Matsuri

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