概要

忌部神社(いんべじんじゃ)は、島根県松江市東忌部町に鎮座する古社で、出雲国意宇郡(おうぐん)の延喜式内社である。古代より朝廷の祭祀を司った忌部氏(いんべうじ)の祖神を祀り、出雲国造家との深い関わりを持つ歴史ある神社として知られる。例祭は毎年10月19日に執り行われる。

歴史

創建年代は不詳だが、延喜式神名帳(927年成立)に出雲国意宇郡の小社「忌部神社」として記載されており、少なくとも平安時代初期には朝廷から正式な式内社として認定されていた。主祭神は天太玉命(あめのふとだまのみこと)で、忌部氏の祖神とされる。忌部氏は中臣氏(後の藤原氏)と並ぶ古代の祭祀氏族で、宮中の祭祀・神具製作を担った一族である。中世以降、出雲国造家(千家・北島両家)との関係を深め、出雲信仰圏の重要拠点のひとつとして続いてきた。

見どころ

社殿は大社造の流れを汲む簡素ながら格式高い造りで、出雲地方独特の建築美を伝える。境内は鎮守の森に囲まれ、樹齢数百年とされる古木が点在し、古社らしい荘厳な雰囲気が漂う。例祭の10月19日には、地元氏子による神楽奉納が行われる。出雲神楽の流れを汲む荘重な舞は、出雲地方の祭祀文化を今に伝える貴重な民俗芸能である。普段は静かな里宮であり、参拝者も少なく、出雲の古社の素朴な信仰風景を体感できる。

開催情報

所在地は島根県松江市東忌部町953。最寄駅はJR山陰本線「松江駅」からバスで約25分(東忌部行き)、または車で約20分。例祭は毎年10月19日。境内参拝は終日無料。公共交通機関のアクセスはやや限定的で、レンタカー利用が便利。10月の松江は朝夕冷え込むため、薄手のコートを持参するとよい。

周辺の見どころ

松江市は宍道湖を中心とした水の都として知られ、松江城(国宝・現存12天守のひとつ)、塩見縄手の武家屋敷通り、小泉八雲記念館などの歴史観光地が市内に集積する。出雲信仰の総本山「出雲大社」までは車で約45分。同じ意宇郡内には熊野大社(火の神を祀る出雲国一宮)、神魂神社(最古の大社造社殿・国宝)も点在し、出雲神話の聖地巡りに最適。宍道湖の夕日は日本夕陽百選にも選ばれている。


出典・関連リンク

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